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「涙を見せたくなかったんだな。いいやつだなあ」
 ひとりになったのび太は、いつもの空き地の土管に腰掛けた。
 すると、そこに眠りながらフラフラと空き地の前を通っていく男の姿があった。
 ジャイアンだ。ジャイアンは、ときどき寝ぼけて夜中に散歩をするくせがある。

 …とその時、ジャイアンはハッと目を覚ました。
「だれだっ。そこでにやにやしてるのは! なんだのび太か。
 おれが寝ぼけてるところをよくも見たな。許せねえ!」
 ジャイアンはのび太の胸ぐらをつかむと、思わずのび太は叫んだ。
「わあっ、ドラ………」
 しかし、ここでドラえもんを呼ぶわけにはいかない。のび太は口に手を当てた。

 のび太はジャイアンに言った。
「けんかならドラえもんぬきでやろう」
「ほほう……えらいな、おまえ。そうこなくっちゃ」
ジャイアンはボカッと一発、のび太を殴る。完全に吹っ飛ぶのび太。

 
 一方、ドラえもんは、さっきのび太に助けを呼ばれたような気がしてならない。
 心配になったドラえもんは、町中を走り回ってのび太を探すが、見つからない。
 先に帰ったのかなと思って家に帰ってみたが、やはりのび太はいなかった。

 空き地では、ジャイアンはのび太を殴り続けていた。
 ボロボロになって完全にのびてしまったのび太。
「どんなもんだい。二度とおれにさからうな」
 しかし、のび太はしつこくムクッと起きあがり、ジャイアンに言った。
「待て! まだ負けないぞ」
「なんだおまえ。まだなぐられたりないのか」
「何を。勝負はこれからだ」
 さらにガツンと殴られるのび太。

 
 ドラえもんは、家でのび太の帰りを待っていた。
 しかし、まだ帰ってこない。あれから既に一時間もたっている。
「どこで何してんだ。最後の晩まで人に心配かけて」とドラえもんはのび太のことが気が気でならなかった。

 
 さらにジャイアンはのび太を殴り続け、再びのび太はダウンする。
 ジャイアンは息を切らしながらのび太に言った。
「ふう、ふう。これでこりたか。何度やっても同じことだぞ。はあ、はあ、いいかげんにあきらめろ」
 帰ろうとするジャイアン。
 しかし、のび太は最後の力でジャイアンの足にしがみついて言った。

「ぼくだけの力できみに勝たないと……ドラえもんが……安心して……帰れないんだ!」
「知ったことか!」
 更にのび太をぶん殴るジャイアン。

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